つくもなす


  器の漆つぎ*chiho

1979年生まれ、鹿児島市出身。鹿児島市谷山在住。

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2011年01月27日

寒い日が続く中、昼間が晴れて気持ちのいい日でした。

鹿児島県の北の方では、新燃岳の噴火、鳥インフルエンザなど、災害が続いていますが、一刻も早い生活の復旧を同じ県民として、また隣県の宮崎県も含めて、祈っています。
ついつい平和に日常を暮らしていると忘れがちな、自然の人間に制御できないスケールに対する畏敬の気持ちと、大昔から人間がときに戦い、調和し、生かせてもらったことにも思いをはせながら。


今日の夕方、うとうとしたときに、パステルまではいかない明るい青と黄の、対比がすごい夢を見ました。
まぁ夢なんぞブログにせんでもいいのですが、とてつもなくでっかい白いべッドに、世界ふしぎ発見!のおなじみ竹内海南江さんがペン画タッチで登場して、あぁ~と、体を投げ出します。
すごくでっかいベッドなので、竹内さんはちっちゃい縮尺です。三つ編みがまさに彼女です。
小さい頃から見ていた最初の旅人イメージ、ある意味旅する女原風景の、竹内さんです。

そして、竹内さん目線に切り替わって、目の前がむき出しのでっかい空で、最初は雲もまだらの暗めの深い青の空だったところに、突然、黄色い太陽が昇ります。オレンジじゃなくて、すごく黄色い、明るい光が青い空を照らしだします。
それで、竹内さんはえっ?はっ、として、今太陽が昇る時間じゃないのに、でも、すごくきれい。と思って、うれしくなって、目を閉じて、放射線状にのびてくる、黄色の光を体いっぱいに浴びます。
そこで目が覚めまして・・・。

私自身がすごく癒された夢でした。



ええと、前置きが長くなりました。

タイトル「つくもなす」、ご存知でしょうか?
食べる茄子ではないのです。
ここは器の漆つぎのブログでして、今日は珍しくそれらしいことを書いてみます。

九十九茄子、松永茄子、九十九髪、作物茄子、付藻茄子、とりあえず全部「つくもなす」という、ある陶器の名前です。

ナス、というだけあって、茄子(米茄子?)にそっくりな、コロンとしたまるい形です。
茶道では、茶入れの中で、木製で漆塗りの棗(なつめ)と、陶器の茄子(なす)の、二種類があるそうですが、その陶器の方ですね。(私は茶道に疎いのですが・・・)

静嘉堂文庫美術館所蔵:大名物 唐物茄子茶入 付藻茄子(松永茄子)(←写真あります)

その茄子の中で、現存している名器、と呼ばれているのが、この九十九茄子、なんだそう。
説明書きにもありますが、ときは、大阪夏の陣。
戦火で破壊された茄子を、当時の塗師(漆塗り師)が、漆で修復したのが、この姿なんだそうです!!!


ふーん、茶色いお茶入れ。


かもしれない、ですが、漆で器を修復するものとしては、わぁっと鳥肌ものです!!!

この釉薬がかかったような模様は、どうやらすべて漆での仕上げらしいです。
もとはこのような模様がなかったかもしれないですし、多分破損が大きく、拾い集められた破片も、わずかだったのではないかと思います。

写真から勝手に推測すると、集められた破片は、下の濃い茶色の部分のみ?
つまりあとは欠損部分を埋めたので、色調がちがって、それを釉薬仕上げの模様のように仕立てたのではないか?
と、思いました。(現物を見ていないのでわかりませんが)

そうだとしたら、元のあの微妙な茄子の曲線を欠損を埋めて再現しつつ、そこから現れる模様をいかにいかすか、元のままには戻らないものを、いかにさらによいものに仕上げるか、結果的に、誰もが違和感を感じない、釉薬の模様のようなさりげなく気品高い、その仕上げに持っていくか、それはそれは、鳥肌モノです!!!

漆での陶磁器の修繕は、基本、透明ボンドでくっつけたようにはなりません。(濃い色の陶磁器では目立たないように仕上げられます)

「傷跡がまったく見えない」、というのは、何も線が見えない、ということで目指すものではないと私は思っています。
修繕の跡が(漆色でも、金などでも)あまりにも自然にそのもとの陶磁器になじんでいて、その跡がさらによい意匠となっている、だから
「跡が跡として痛々しく見えない、むしろよくなった!」というところを目指すものだと私は思っています。
なかなかそこに見合う技術の習得は道のり長いものですが。

その点からいくと、この大名物 唐物茄子茶入 付藻茄子(松永茄子)、無言で語らず、その究極を体現していると思うのです。

世田谷の静嘉堂文庫美術館に収蔵されているようなので、次回東京に行くときには、ぜひ本物を見て帰りたいと思います。


たまには、漆つぎらしい記事を書いてみました。
写真もなく、小難しいことを生意気に書きましたが、読んでいただきまして、ありがとうございます。
自分の技術を高める原動力に。
自分の目指すところを、少しでも理解していただくために。

器の修繕をするまでは、まったく興味のなかった古陶磁器ですが、当時の修繕がすばらしい、そして現存している、と聞くと、元気がわいてくるようになりました。


また寒い週末を迎えそうで、器の修繕もスローペースになりますが、春は確実に近づいています。
紅菜苔(コウサイタイ)という紫の、アクのあるお野菜をおいしく頂くと、見えない土の下からの、「春、遠からじ」を感じます。

+++紅菜苔のマスタード和え++++++++++++
紅菜苔をオリーブオイルと塩でさっと茹でて冷ます。
粒マスタード、塩、黒コショウ、ワインビネガー、
オリーブオイルなどをあえて、マスタードドレッシングにして、
紅菜苔を和えるだけ。
++++++++++++++++++++++++++++++++


春の息吹を感じながら、この寒い冬、もう半ばにさしかかったでしょうか?
どうぞ、あたたかくしてお過ごしください。


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Posted by 器の漆つぎ*chiho at 22:56
Comments(2)作業日記や日々のつれづれ
この記事へのコメント
毎度ながら…こんな時間に~おばんです☆*゚゚


素敵な夢ですネ♪♪
chihoサンの描写で目に浮かびます♪
(人*´ω`)*゚゚


『つくもなす』…最初何か,言葉の接続語的なものかと思いました~『しかしそれは~』みたいな…

(例)私は美味しそうなチョコを見つけた。家に帰り,家族で食べようと思い買い求めた。つくもなす,帰りつく迄に私のお腹にすべておさまった。

みたいな… ←実話。
Posted by アキ at 2011年02月03日 02:21
つくもなす!
あはは。その使い方、いいですね~。
流行らせましょう!

ちなみに、例文のチョコ、私も同じことを一昨日やりました・・・。
だって、店でチョコの宣伝ばっかりしてるので、帰る頃には、もうチョコのことでアタマいっぱいなんですよー。
Posted by 器の漆つぎ*chiho器の漆つぎ*chiho at 2011年02月04日 07:36
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